ヨーロッパに先行した(後進国)アメリカの鉄道事業
- 2022.08.03 Wednesday
- 08:58
JUGEMテーマ:歴史
「物語 アメリカの歴史」(猿谷要)によると、アメリカの最初の大企業は鉄道事業だったそうだ。
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南北戦争以前には大統領の半数以上が南部出身者であったのに、戦後は南部から大統領が出なくなってしまった。W・ウイルソンもL・Bジョンソンもそれぞれある程度南部にかかわりはあったものの、本当に南部人らしい南部人が当選するのは、一九七六年のジミー・カーターを待たなければならない。その時、「これでようやく南北が合体した」と書いた新聞もあったほどである。
代ってアメリカの主権を握ったのは、勝利者としての北部だった。北部が戦前に主張していたことは、ほとんど実現されたが、とくに際立っていたのは大陸横断鉄道の建設だった。戦争が始まったときの鉄道は、北部の二万マイルに対して南部は九〇〇〇マイル、すでの北部の優勢は明らかだったが、目ざとい連中の狙う次の手は、早くも戦争中に打たれようとしていたのである。
カリフォルニアから約二〇万ドルもの大金を携えてワシントンの議会にやってきたコリス・ハンティントンは、鞄を空にしてカリフォルニアに帰った。しかし彼の手には、大陸横断鉄道建設の許可状が握られていたのだ。
こうして設立された会社が、政府からの莫大な交付金や沿線土地の下付を背も鉄道建設の競争をしながら、とうとう一八六九年に大陸横断鉄道を完成させる。このとき大勢の中国人移民が、西武での敷設作業に従事している。日本で新橋・横浜間に初めて鉄道が開通したのは一八七二年のことだから、それよりも早くあの広大な大陸を線路でつないでしまったのである。
中略
「鉄道はアメリカで最初にあらわれた大企業であり、後に巨大な産業的企業の財政を処理し、それを監理していくうえで唯一の利用可能な手本となったからである。また鉄道の発起人、融資者、経営者たちは、巨額の投資や複雑な管理様式を必要とする民間事業体を設立し、その財政をまかない、それを経営した最初の実業家たちであったからである。アメリカの実業家は他の国々の実業家に先んじて新しい方法を開拓した。それは、アメリカの鉄道が公企業ではなく民間企業であったためであり、まだ鉄道網や個々の鉄道が大規模なものであったためでもある。一八七五年までに、アメリカの一つの鉄道会社ーペンシルヴェニア鉄道ーだけで、当時のフランスの鉄道の二分の一、イギリスの鉄道の三分の一以上の営業距離をもっていた」
こうして、一九世紀の終りには、アメリカ一国の鉄道網が全ヨーロッパを凌駕する。
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第一次世界大戦で英仏が没落し、アメリカに取って代わられたとする歴史観が大勢であるが、鉄道網においては、南北戦争後のアメリカの民間資本の取組がヨーロッパを圧倒したのである。
アメリカが超大国になるのは、南北戦争が終結した時点で時間の問題だったのである。