敵将に「名将扱いされる軍人」の評価
- 2022.04.27 Wednesday
- 10:19
JUGEMテーマ:戦争・紛争
「太平洋暗号戦史」(W・J・ホルムズ著、妹尾作太男訳)にて、山本五十六の人物評価している箇所が集中している箇所がある。(149〜151頁)アメリカ海軍は山本五十六を名将扱いしている部分とそうでない部分がある。
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・山本提督は、われわれの戦闘情報班に匹敵する組織を持っていなかった。
・山本を射殺することが連合諸国の利益にもっともかなうか。どうかという問題もあった。
・”真珠湾攻撃”を計画したのは山本であったし、ミッドウエー海戦を計画したのも彼であった。
山本は日本海軍の中でとくにすぐれた指揮官であり、彼に代わるべき優秀な人物がいないということで、一同の意見が一致した。
・山本の死は、日本の士気を低下せしめるための、きわめて大きな打撃となることだろう。
・山本五十六は勝負師であった。
・山本五十六に勝負のチャンスがもう一度与えられていたら、もういちどパール・ハーバー、あるいはもう一度ミッドウエー攻撃という事態が生じていたかもしれない。
・山本五十六の後任者として連合艦隊司令長官に就任した古賀峯一提督は保守的な防衛主義者で、そのために彼を攻撃するのは困難であったが、しかし彼は決して山本に比肩しうる人物ではなかった。
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著者の本音を意訳すると以下のように書き換えできるのではないか。
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・山本提督は、アメリカ海軍の戦闘情報班のような組織を持つ意味と価値を理解しなかった。
・(能力的な問題は別として)日本の国民的英雄とみられる山本を射殺することが連合諸国の利益にもっともかなうと考えた。
・軍事専門家なら誰が見ても、中途半端な真珠湾攻撃、ミッドウエー海戦を計画したのは山本であった。
・山本は日本海軍の中で、アメリカ海軍にとって組みやすい指揮官であり、アメリカにとって都合が良いという意味で、彼に代わるべき人物がいないということで、一同の意見が一致した。
・山本の死は、盲目的に山本を有能としてきた日本軍の士気を低下せしめることになるだろう。
・山本五十六は隙だらけの作戦、戦術を好む勝負師であった。
・山本五十六に勝負のチャンスがもう一度与えられていたら、(隙だらけ、ミスだらけ、中途半端な)真珠湾攻撃、ミッドウエー海戦を計画していたかもしれない。
・山本五十六の後任者として連合艦隊司令長官に就任した古賀峯一提督は保守的な防衛主義者であるため、なかなか隙を見せないところがあり、そのために彼を攻撃するのは困難であり、そのため彼はアメリカ海軍にとって好都合な人物ではなかった。
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が、敵側の将官が山本五十六を名将であり、(隙だらけの、ミスだらけ、中途半端な)勝負師であるとして持ち上げ、後任の古賀峯一を(隙のない、ミスの少ない)保守主義的な防衛主義者との文脈から、著者の本心は山本五十六を愚将とみていたと推定する。
真珠湾攻撃を中途半端に仕上げ、ミッドウエー海戦で敗北したことを根拠に、軍事上の責任を追及すべきだったのである。
無名の学徒に特攻出撃決定させるなら、その実施前に、山本五十六一派を解任させるべきだったのである。